活動履歴2018

セミナーの内容

2018年422日(日)15時開演

 
レクチャー&コンサート
講師:
Quartetto Armonico(クァルテット・アルモニコ)
菅谷早葉(ヴァイオリン)
生田絵美(ヴァイオリン)
阪本奈津子(ヴィオラ)
松本卓以(チェロ)
1995年東京藝術大学の学生によって結成され、2000年弦楽四重奏として同大学大学院修了。その後2004年までウィーン音楽演劇大学などで研鑽を積む。第4回シューベルト国際コンクール優勝、第8回ロンドン国際弦楽四重奏コンクール第2位、第2回ハイドン国際室内楽コンクール最高位。2015年から活動を休止していたが、2016年チェロの松本卓以が加わり、2017年定期演奏会を再開。各地で新たな演奏活動を展開している。
 
□コンサートプログラム
ハイドン:弦楽四重奏曲第78番 変ロ長調 「日の出」 Op.76-4 Hob.Ⅲ-78
ウェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9
L.v.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 「ラズモフスキー第3番」 Op.59-3
 
 
 
 

2018年512日(土)15時開演

 
公開レッスン&コンサート
講師:佐々木亮(ヴィオラ)
東京藝術大学附属高校を経て同大学卒業。現音室内楽コンクール第1位。東京室内楽コンクール第2位。ジュリアード音楽院でさらに研鑽を積む。アスペン音楽祭、マルボロ音楽祭に度々参加、著名な演奏家たちと全米各地で公演を行う。NHK交響楽団首席ヴィオラ奏者。20082014年、岡山潔弦楽四重奏団メンバー。著名演奏家たちと室内楽の分野で活躍。桐朋学園大学、洗足学園大学、東京藝術大学講師。
 
共演:大伏啓太(ピアノ)
東京藝術大学附属音楽高校、同大学を経て同大学院修士課程修了。国内外のコンクールにて優勝、入賞を重ね、2014年には日本音楽コンクール審査員特別賞を授与されるなど、共演者としての信頼も厚い。東京藝術大学大学院室内楽科非常勤講師を務め、現在は同大学ピアノ科、および桐朋学園大学ピアノ科非常勤講師。
 
 
□受講生
1)  佐川真理(Va.)桐朋学園大学卒業、桐朋オーケストラ・アカデミーに在学中
下田絵梨花(Pf.)桐朋学園大学卒業
 
2)  塚本 遼(Va.)東京藝術大学卒業、東京音楽大学科目等履修生
横山瑠佳(Pf.)東京藝術大学附属高等学校及び同大学卒業、同大学大学院在学中
 
3)  日下水月(Va.)桐朋学園大学4
中山あまね(Pf.)桐朋学園大学4
受講曲:R.シューマン:おとぎの絵本 Op.113
 
□コンサートプログラム
シューマン:おとぎの絵本 Op.113
ヒンデミット:ヴィオラとピアノのためのソナタ へ調 Op.11-4
 

2018年610日(日)15時開演

 
レクチャー&コンサート
演奏:Gottlieb Wallisch/ゴットリープ・ヴァリッシュ(ピアノ)
ウィーンの音楽一家に生まれ、6歳よりウィーン音楽演劇大学に学び、卒業。ストラヴィンスキー・アウォード(USA)にて第1位とイーヴォ・ポゴレリッチ賞。エリザベート王妃国際コンクール、クララ・ハスキル・ピアノ・コンクールにてファイナリスト。世界各地の主要オーケストラ、指揮者と協演、また主要ホールにてソロリサイタルを行う。ヨーロッパ各地、アメリカ、中東諸国、日本、香港等でコンサートツアーを行っている。ジュネーブ高等音楽院教授。スタインウェイ・アーティスト。
 
通訳:薮田京子
 
□コンサートプログラム
シューベルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 「遺作」からの抜粋 D840
シューベルト:ピアノ・ソナタ 嬰へ短調 D571 (未完)
シューベルト:ピアノ・ソナタ ホ短調 D769 A (断片)
シューベルト:ピアノ・ソナタ へ短調 D625/505
 
 
 

2018年71日(日)15時開演

 
公開レッスン&コンサート
講師:
植田克己(ピアノ)
東京藝術大学および同大学院修了。デトモルト音楽大学、ベルリン芸術大学でクラウス・シルデ氏に師事。第17回ロン・ティボー国際音楽コンクール第2位。ベルリン芸術大学助手。ソリストとしてドイツ、日本の主要オーケストラと協演。1986年~2005年『植田克己ベートーヴェンシリーズ全27回』を開催するなど企画、演奏で積極的な活躍を行う。藝大ジュニア・アカデミー校長、上野学園特任教授、東京藝術大学名誉教授。
 
共演:
玉井菜採(ヴァイオリン)
桐朋学園大学卒業後、アムステルダムのスヴェーリンク音楽院、さらにミュンヘン音楽大学にてA.チュマチェンコ氏に師事。J.S.バッハ国際コンクールをはじめエリザベート王妃国際コンクール、シベリウス国際コンクール等数々のコンクールに優勝、入賞し、ソリストとして国内外で活躍。紀尾井ホール室内管弦楽団コンサートマスター。アンサンブルof東京、東京クライスアンサンブルメンバー。東京藝術大学教授。
 
□受講生
1)  今岡秀輝(Vn.)東京藝術大学大学院1
横山瑠佳(Pf.)東京藝術大学大学院1
2)  藤瀬実沙子(Vn.)東京音楽大学大学院修士課程2
鳥越菜々(Pf.)東京音楽大学大学院修士課程2
【受講曲】
L.v.ベートーヴェン:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第9番 イ長調 「クロイツェル」 Op.47
 
□コンサートプログラム
L.v.ベートーヴェン:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第9番 イ長調 「クロイツェル」 Op.47
 

2018年721日(土)15時開演

 
レクチャー&コンサート
講師:
星野宏美(音楽学)
東京藝術大学楽理科卒業、同大学院修了。博士(音楽学)。著書に『メンデルスゾーンのスコットランド交響曲』(音楽之友社)、玉川大学所蔵メンデルスゾーン自筆ピアノ譜『最初のワルプルギスの夜』(雄松堂)、楽譜校訂に“Mendelssohn Bartholdy:Sonaten für Violine und Klavier (Bärenreiter、桐山建志と共著)、楽譜解説に『メンデルスゾーン交響曲第3番』、『同第4番』、『同無言歌集』(音楽之友社)など。立教大学教授。
 
演奏:
長尾春花(ヴァイオリン)
東京藝術大学、同大学院を首席で修了。グラーツ音楽大学ポストグラデュアレ課程修了。現在、東京藝術大学大学院博士課程、ハンガリー国立リスト音楽大学在学中。2016年よりハンガリー国立歌劇場コンサートマスター。宗次ヴァイオリンコンクール第1位。日本音楽コンクール第1位。仙台国際コンクール第3位。東京をはじめ各地の主要オーケストラ、フランス国立放送オーケストラと協演。20186月、カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクール優勝。
 
加藤洋之(ピアノ)
1990年ジュネーブ国際音楽コンクール第3位。東京藝術大学を卒業後、ハンガリー国立リスト音楽大学に留学、ケルンでも研鑽を積む。国内外のオーケストラとの協演をはじめ、ヨーロッパ各地の主要ホール、音楽祭などで演奏活動をおこなう。ウィーンフィルのメンバーと頻繁に室内楽を共演、特にコンサートマスター、ライナー・キュッヒル氏との共演は20年近くに及ぶ。
 
□コンサートプログラム
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
 
 

2018年819日(日)15時開演

 
新進演奏家コンサート
演奏:
葵トリオ
秋元孝介(ピアノ)
小川響子(ヴァイオリン)
伊東 裕(チェロ)
東京藝術大学、サントリーホール室内楽アカデミー第3期にて出会う。このメンバーで研鑽を積み、演奏活動をしていきたいという思いから、2016年に結成。藝大定期室内楽、水曜午後の音楽会、京都・バロックザールでのリサイタル開催など、東京を中心に関西など各地で精力的に演奏活動を行っている。これまでに、伊藤恵、中木健二、花田和加子、原田幸一郎、堀正文、松原勝也、山崎伸子の各氏に師事。
 
□コンサートプログラム
ハイドン: ピアノ三重奏曲 ハ長調 Hob.ⅩⅤ:27
アイヴス : ピアノ三重奏曲
リーム : Fremde Szene Ⅲ 「見知らぬ情景」 第3番
シューベルト : ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 Op.100 D929
 
 

2018年1020日(土)15時開演

 
レクチャー&コンサート
講師:
山本美樹子(ヴァイオリン)
東京藝術大学大学院室内楽科後期博士課程修了。「ロベルト・シューマン《ヴァイオリンソナタ第3番イ短調》Wo02 作品論」にて博士号(音楽)を取得。弦楽四重奏では東京藝術大学とウィーン音楽演劇大学の共同プロジェクト「haydn total」に参加。大阪、東京にて定期的にリサイタルを開催、室内楽の分野で積極的な活動を行っている。東京藝術大学大学院室内楽科、お茶の水女子大学教育学部講師。
 
共演:
小坂圭太(ピアノ)
東京藝術大学を経て同大学院修了。1989年日本音楽コンクールコンクール委員会特別賞(協演賞)受賞。ソロ、伴奏、室内楽、オーケストラの鍵盤楽器、コレペティトゥア等あらゆる分野で幅広く活躍。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科/文教育学部准教授、愛知県立芸術大学、相愛大学音楽学部非常勤講師。
 
荒井 結(チェロ)
中学卒業後、Idyllwild Arts Academy(米国)に留学。2003年よりハンブルク音楽大学で研鑽を積む。2008年岩城宏之音楽賞受賞、ブラームス国際コンクール第2位。平成24年度福井県文化奨励賞。日本各地のオーケストラと協演、ソロ、室内楽を中心に活躍。
 
□コンサートプログラム
シューベルト:小協奏曲 ニ長調 D345(ピアノ伴奏版)
シューベルト:華麗なるロンド ロ短調 Op.70 D895
シューベルト:ピアノ三重奏曲 変ホ長調 「ノットゥルノ」 D897
シューマン:幻想小曲集 イ短調 Op.88
シューマン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第3番 イ短調 WoO2
 
 
 

2018年1117日(土)15時開演

 
レクチャー&コンサート
講師:
野平一郎(作曲、ピアノ)
東京藝術大学作曲科を卒業し、同大学院修了。パリ国立高等音楽院で作曲とピアノ伴奏法を学び卒業。作曲家としてはフランス文科省、IRCAMからの委嘱作品を含む多くの作品が国内外で放送されている。また演奏家として国内外の主要オーケストラとの協演、多くの名手たちとの共演など、精力的な活動を行っている。中島健蔵賞、サントリー音楽賞、芸術選奨文部科学大臣賞等受賞。2012年紫綬褒章受賞、2018年日本芸術院賞受賞。「ベートーヴェン ピアノ・ソナタの探求」上梓。静岡音楽館AOI芸術監督、東京藝術大学教授。20188月、新作室内オペラ「亡命」を初演(原作、台本 野平多美)。
 
□コンサートプログラム
L.v.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110
L.v.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111
 
 
 

2018年129日(土)15時開演

 
レクチャー&コンサート
講師:小林道夫(ピアノ、チェンバロ、指揮)
東京藝術大学楽理科を卒業後、ドイツのデトモルト音楽大学に留学、研鑽を積む。ピアノ、チェンバロ、室内楽、指揮など多方面にわたり活躍。世界的名伴奏者であったジェラルド・ムーアと比肩するとまで言われ、世界の名だたる演奏家たちと共演。サントリー音楽賞、ザルツブルク国際財団モーツァルテウム記念メダル、モービル音楽賞などを受賞。国立音楽大学教授、東京藝術大学客員教授、大阪芸術大学大学院教授などを歴任。大分県立芸術短期大学客員教授。
 
共演:服部芳子(ヴァイオリン)
東京藝術大学附属音楽高校、同大学を経て同大学院修了。1972年ハンブルク音楽大学で国家試験およびソリスト試験に合格。ベルリンのメンデルスゾーンコンクール、弦楽四重奏部門で優勝。ブリュッセルのイザイ協会よりイザイ・メダルを授与。ジャパン・ストリングトリオ、ボン弦楽四重奏団メンバーとして活躍。帰国後はエレオノーレ弦楽四重奏団、岡山潔弦楽四重奏団メンバー。愛知県立芸術大学名誉教授。
 
□コンサートプログラム
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
J.S.バッハ:パストレラ ヘ長調 BWV590より第2、第3楽章
スカルラッティ:ソナタ ハ長調 K.513
スカルラッティ:ソナタ ハ長調 K.159
L.-C.ダカン:ノエル
J.-C.モンドンヴィル:ヴァイオリン・ソナタ第6番 イ長調
G.F.ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 Op.1 Nr.13
J.S.バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV816
 

2019年119日(土)15時開演

 
公開レッスン&コンサート
講師:
堀米ゆず子(ヴァイオリン)
1980年桐朋学園大学卒業、エリザベート王妃国際コンクールで日本人初の優勝。以後世界的なオーケストラ、指揮者と協演、室内楽においてもヨーロッパ、日本の代表的演奏家たちと共演。レコーディングも積極的に行っており、ヨーロッパの主要オーケストラ、指揮者とのコンチェルト、J.S.バッハ等CD多数。ブリュッセル王立音楽院教授、マーストリヒト音楽院教授。ベルギー在住。
 
共演:
津田裕也(ピアノ)
東京藝術大学を首席卒業、同大学院修士課程を首席修了。2011年ベルリン芸術大学を最優秀の成績で卒業。第3回仙台国際コンクール優勝、ミュンヘン国際コンクール特別賞。ソリストとして内外のオーケストラと協演、室内楽の分野でも多彩な活躍をおこなっている。
 
□受講生
1)  城戸かれん(Vn.)東京藝術大学大学院修士課程2
横山瑠佳(Pf.)東京藝術大学大学院修士課程1
 
2) 糸原彩香(Vn.)愛知県立芸術大学卒業
佐伯麻友(Pf.)桐朋学園大学研究科修了
 
3) 齋藤 碧(Vn.)東京藝術大学3
尾城杏奈(Pf.)東京藝術大学3
受講曲:R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
 
□コンサートプログラム
シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
 
 

2019年218日(月)17時開演

 
新進演奏家コンサート
演奏:
Quartet Berlin-Tokyo/クァルテット ベルリン・トウキョウ
守屋剛志(ヴァイオリン)
Dimitri Pavlov/ディミトリ・パヴロフ(ヴァイオリン)
Gregor Hrabar/グレゴール・フラーバー(ヴィオラ)
松本瑠衣子(チェロ)
2011年武生国際音楽祭出演を機に結成。オルランド国際コンクールに優勝。他、入賞多数。ハノーファー音楽大学でクス・クァルテットのオリヴァー・ヴィレ氏に師事、修士号を取得。ヨーロッパ、日本各地で演奏活動を行っている。松尾学術振興財団より音楽助成を受ける。青山バロックザール賞、エクサンプロヴァンス音楽祭よりHSBC2015を受賞。ベルリンを拠点とし、ベルリン十字教会、及び札幌・六花亭ふきのとうホールのレジデンス・クァルテット。
 
□コンサートプログラム
L.v.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 「ハープ」 Op.74
シューベルト:弦楽四重奏曲第15番 ト長調 Op.161 D887
 
 
 

2019年317日(日)15時開演

 
レクチャー&コンサート
講師:
伊藤 恵(ピアノ)
桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学、またハノーファー音楽大学においてH.ライグラフ氏に師事。第32回ミュンヘン国際コンクール優勝。その他数々のコンクールに優勝、入賞。ソリストとして国内外の主要オーケストラと協演、リサイタル、室内楽等で活躍。CDではシューマン・ピアノ全曲録音「シューマニアーナ113」『シューベルトピアノ作品集1~6』が代表作であり、2015年度レコード・アカデミー賞、第70回文化庁芸術祭賞受賞。東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授。
 
共演:
戸原 直(ヴァイオリン)
17回コンセール・マロニエ21弦楽器部門第1位。デザインK国際音楽コンクール2012グランプリ第1位。2016年バンフ弦楽四重奏国際コンクールでcareer Development Awards獲得。現在、東京藝術大学管弦楽研究部非常勤講師。藝大フィル・コンサートマスター。室内楽の分野でも多彩な活躍を行っている。
 
高橋奈緒(ヴァイオリン)
東京藝術大学、同大学院修了。名古屋フィル、藝大フィルと協演。オリジナル楽器奏者としても活躍。バッハ・コレキウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカのメンバー。バロックとモダンを問わず、ソロ、室内楽、オーケストラの客演首席奏者などで活躍。
 
樹神有紀(ヴィオラ)
愛知県立芸術大学を経て、東京藝術大学大学院修士課程修了。2015年リゾナーレ室内楽セミナーで、緑の風奨励賞受賞。ザルツブルクモーツァルト国際室内楽コンクールグランプリ。2017年豊田市文化新人賞。ヴィオラスペースをはじめ、多彩な活動をおこなっている。
 
佐古健一(チェロ)
京都大学を卒業後、東京藝術大学大学院修士課程修了。第23回リゾナーレ室内楽セミナーにて優秀賞受賞。第11回ビバホールコンクールで聴衆賞受賞。現在フリーの演奏家として室内楽、オーケストラの分野で多彩な活動を行っている。
 
□コンサートプログラム
W.A.モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K.478
W.A.モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番 イ長調 K.414
 
 

セミナーレポート

「シューマンのおとぎの絵本」

公開レッスン&コンサート
2018年5月12日(土)15時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 
      講師:佐々木亮(ヴィオラ)
      共演:大伏啓太(ピアノ)
 
 本日の講師佐々木亮さんは日本を代表するヴィオラ奏者で、現在NHK交響楽団の首席ヴィオラ奏者。また、2008年から14年まで岡山潔弦楽四重奏団メンバーとしても活動した。昨年11月のTAMA音楽フォーラムで今井信子さんとバルトークの「44の二重奏曲」ヴィオラ版を演奏してくださった。また、今日の共演者、ピアニストの大伏啓太さんは大活躍中の若手で、以前、今井さんとこの場所でブラームスのヴィオラ・ソナタ第2番演奏していただいた。このような岡山芳子・TAMA音楽フォーラム副理事長の歓迎と紹介の言葉とともに公開レッスンが始まった。曲目はシューマンの「おとぎの絵本」(ピアノとヴィオラのための4つの小品)作品113で、ヴィオラとピアノの36人の若手演奏家が受講した。
 まずa組(佐川真理さん(Va)=桐朋学園大卒と下田絵梨花さん(Pf=同)が第1曲、第2曲を演奏し、第1曲についてレッスンを受けた。ついでb組(塚本遼さん(Va=東京芸大卒と横山瑠佳さん(Pf=東京芸大大学院)が第2曲と第3曲、そしてc組(日下水月さん(Va=桐朋学園大4年と中山あまねさん(Pf=同)が第4曲を演奏し、それぞれ指導を受けた。講師の佐々木さんはなんども自分でヴィオラを弾きながらのまことに熱意ある綿密なレッスンとなり、予定の時間を超えるほどであった。ここでは、把握できた要点だけを以下に記したい。
(第1楽章=速くなく))
*流れ良く演奏できたが、この楽章は和音が頻繁に変わるので演奏がとても難しい。もっと強弱をつけるとよい。
*(冒頭を再演させた後)ここがすでに難しい。ここは一つのストーリとなっている。3小節目にひとつ山がある。この豊かな内容を表現したい。強弱の差を相当つけないといけない。表情の変化がほしい。
17小節目は驚きの表現を。
*先へ先へと急ぎすぎないように。pのところは繊細な音作りを。fpの直前はディミヌエンドしてもいいかも。
50小節あたり、空気が入った音がほしい。
57小節からのクレッシェンドの音の上がり下がりのところ、N響によく来る指揮者ブロムシュテットさんがリハーサルで、クレッシェンドであっても下降音型では音を減衰させるのだといっていたがその通りだ。
*最後のところはppだけれど、ヴィオラの音は弱弱しくなく、もう少し音の芯がほしい。
(第2曲=いきいきと)
*いろいろ考えて演奏されたが、もっと強弱の差がほしい。いい意味での驚きがほしい。最初は勇ましくファンファーレ的に弾いて、あとは弱くして変化をつける。
*といって、すこしあとのところでは、初めに強く弾きすぎると後の発展性がない。とにかく強弱の変化を。3連音のクレッシェンドは難しいがしっかりと弾くこと。滑らかな中間部は弱くても、はっきりと弾く必要がある。ピアニッシモであっても、弓使いの敏捷な初速がほしい。
111小節以下、ディミヌエンドはよかったが、もう少し「ひとときの夢見心地」という気持ちで。同じ4分音符であっても、音の表情を変えること。
183小節あたりのコーダでは聞く人にわかってもらえるように弾くこと。
(第3曲=迅速に)
*いい演奏だった。
*ただし、なるべくアーティキュレーション(歯切れ良い発音)をつけるように。
*最初から飛ばしていってよい。そしてそのあと少し変化をつけること。
8小節からのfpのところはもう少しfを強く弾くこと。
(第4曲=ゆっくりと、メランコリックな表情で)
*出だしは強すぎず、内省的に演奏したい。
3小節目、ヴィオラの存在感は必要だ。この和音には驚きがほしい。ppであってもビブラートをつけて心を込める。臨時記号が出てきた時というのは、だいたい大事なところだ。
*感情が高まるところなので、音が切れてしまわないように。弓の返しがわからないように弾くと、音がつながる、このように・・・と弾いてみせる。
77小節から、ピアニッシモでも音が弱くなりすぎないように。弱くてもすごく大切なところなのだから。
*そのあとのクレッシェンドとディミヌエンドのところの弓の返しを速く。
 
 休憩の後、コンサートに移った。曲目はレッスンで取り上げたシューマンの「おとぎの絵本」全4曲とヒンデミットのヴィオラとピアノのためのソナタ へ調 D625。シューマンではレッスンでの指導通りの変化に富んだ演奏となり、とりわけ第4曲の深い瞑想に聴衆は静まり返って傾聴した。ヒンデミットは第1楽章の静謐で穏やかな幻想から次第に感情を高め、第2楽章の変化にとんだ主題と変奏を経て、第3楽章フィナーレでは、曲想がさらに情熱的に盛り上がるさまをヴィオラとピアノが十二分に表現して、圧倒的な幕切れとなった。
(記録者:西谷晋)
 
 
 
 

シューベルトの未完のピアノソナタと断片

 レクチャー&コンサート 
2018610日(日)15時 スタジオ・コンチェルティーノ

 
講 師  ゴットリープ・ヴァリッシュ(Gottlieb Wallisch ピアノ)
通 訳  薮田 京子
 
 雨の季節にはいり、この日は台風5号の影響もあって、昼ごろから本降りになった。ピアノ曲や室内楽を聴くには、こんな落ち着いた雰囲気がかえってよいのかもしれないなどと思ったりしながら、スタジオ・コンチェルティーノに向かった。
 第87回セミナーの講師はヨーロッパを中心に活躍しているウィーン生まれのピアニスト、ゴットリープ・ヴァリッシュさん。この8月で40歳になる。まず、岡山潔理事長がヴァリッシュさんを紹介。「2年半ほど前にこの(第55回)セミナーでウィーンのハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの3人を取り上げて、作風の違いなどを話していただきました。ゴットリープとはいろんなつながりがあります。3年前に予定していた(岡山潔弦楽四重奏団の)ヨーロッパ公演の曲目にブラームスのピアノクインテットがはいっていたのですが、その時のピアノがヴァリッシュさんでした。この公演が不可能になり、何ともくやしかった」と振り返った。
 
 「今日のテーマは日ごろあまり聴くこともない曲、シューベルトの未完成のピアノソナタです。完成した作品が11なのに対し、途中で終わっている断片など12曲が未完成で、それらで250ページのこの本一冊になります」とヴァリッシュ先生。31歳で早逝したシューベルト(Franz Peter Schubert 17971828年)は幅広い分野にわたって1000を超える楽曲を残したが、死後に見つかったり、途中で作曲をやめたりしたものが少なくない。先生は「いろいろな分野で未完の作品があります。まず思い浮かぶのは交響曲(ロ短調、音楽学者オットー・エーリヒ・ドイチュによる作品番号D759)。第1、第2楽章は完成しているが、第3楽章はちょっと書いてあるだけ。ほかにも弦楽四重奏曲ハ短調(D703)は第1楽章しか完結していなくて、第2楽章はスケッチだけ。あまり知られていないオラトリオ『ラザルス』(D689)も未完成です」「ほかの作曲家にも未完のものがあり、モーツァルトの『レクイエム』がいい例です。プッチーニの『トゥーランドット』も、ベルクの『ルル』もそうです。バッハの『フーガの技法』も最後の方は完成していないのでは。これは晩年の作品だったので完成しなかったのか」と、未完に終わった曲をいくつか挙げた。
 
 そして、ピアノに向かって弾き始める。「これをシューベルトが作曲したのは何歳の時だったでしょうか」と聴講席に質問。「21歳くらい」「成熟した大人が書いたと感じられます」といった答えが返る。「これはいちばん早いソナタ(ホ長調D157、一連番号で第1番)で、1815年、17歳だった。第3楽章までで、第4楽章がありませんが、この先はどうなるのか、なぜここで終えたのか考えてみましょう。もしかしたら原稿が紛失してしまったのかもしれないし、ほかの曲にとりかかったのでやめたのかもしれません。未完の曲には謎が残ります」「1815年にはシューベルトがアントニオ・サリエリのレッスンを受けていた事実があり、弦楽四重奏曲(ト短調D173、第9番)と2つの交響曲(第2、第3番)も作曲している。このピアノソナタは弦楽四重奏のようなものをイメージして書かれています。このころから、彼はピアノソナタ、弦楽四重奏曲、交響曲をとても大事なものとして意識していた」などと解説する。
 
続けて、「彼は新しい実験を試みています。1817年、20歳の時の6曲のソナタ・シリーズのなかに、変ニ長調という今までにない調性で書かれたもの(D567)がある。ベートーヴェン、モーツァルト、ハイドンもこの調性では書いていない」と、シューベルトの革新性を指摘した。このあたりになると、音楽の知識に乏しい筆者は苦しい。調性は音の強弱、長短などと併せ、高低の細かな変化で微妙な響きを作り出す技法といった物理的理解が関の山で、変ニ長調は五線譜のト音記号の次に半音下げるフラットが5つも付いている複雑な調性くらいのことしか分からない。
 
 次に先生が説明なしで弾いたのは1817年の嬰へ短調D571(第8番)で、第1楽章の展開部で途切れている。「静かですが、どんなことが頭に浮かびましたか」という問に、聴講席から「ベートーヴェンの月光ソナタに近いのでは」という声。先生は「月夜というか、そういったイメージですね。ショパンの『舟歌』にも近く、いつも同じ小さな動きが続くのが特徴です。そこに問題があり、コントラストがつけられない。ソナタ形式には2つの主題を対比させて緊張感を出すねらいがあるが、この曲は第1、第2主題が似ていて区別がつかず、緊張が欠けています。だが、たいへん多くの転調が行われ、広がりがあってすばらしい」「ソナタ形式ではあるのですが、(形式にとらわれない)幻想曲のようになっている。また、シューベルトはベートーヴェンのプレッシャーを感じていたのかもしれない」と分析する。
 
 3曲目は1823年作曲とされる39小節しかない短いスケッチ(ホ短調D769a)。「前の曲が何の変化もなかったのに対し、ドラマチックにしようとした。オーケストラ的な発想がうかがえる」という。当時は歌劇と交響曲が中心の時代だったので、「歌曲の王」と異名をとったシューベルトもピアノソナタ、弦楽四重奏曲を書いているうちに交響曲への道を歩みだしたということか。次の4曲目は1825年のハ長調D840(第15番)で、1861年に出版する際に誤って「遺作(Reliquie)」とされた。「未完成交響曲」と同じように第1、第2楽章は完成したが、第3、第4楽章は未完で、先生は「第1楽章がブルックナーの交響曲のように聞こえるのが興味深い」と言う。
 
「未完成交響曲」(1822年作曲)はシューベルトの死から37年目の1865年に発見、初演された。また、このソナタは、1838年にウィーンに足を運び、シューベルトの兄フェルディナントのもとを訪ねたロベルト・シューマンが交響曲ハ長調「ザ・グレイト」D944と一緒に自筆譜を発見したとされている。筆者はこれら2つの交響曲からもブルックナーの響きが聞こえるように思う。先生は『遺作』の第1楽章を4分ほどの繰り返し部分を省いて演奏した。起伏の大きな力強い曲で、なるほど交響曲を連想させる。
 
15分の休憩の後、解説をはさみながら第2楽章(ハ短調)と、完成途上の第3楽章(変イ長調)のそれぞれ冒頭部分を弾き、「ハ短調から変イ長調へはちょっと飛躍した感じ」「第3楽章は変イ長調から突然、イ長調に変わり、変イ長調に戻らなければならないのにそのまま終わっている」「彼はどう続けたかったのか、結論が出せずに失敗したのか、ただ単にやめてしまっただけなのか」と、作曲家の心のうちを想像する。さらに「シューベルトに失礼かもしれないが、車が行き止まりに入って困り、戻り方がわからなくなったようなものか。フォルテッシモフォルツァ―トを書き込むなど多くの実験をしている」「では、未完を終わらせる(完結させる)ことができるのか。この曲ではエルンスト・クルシェネクやパウル・バドウラ=スコダらが補筆していますが、私はそうはしませんでした。シューベルトが続きを思いつかなかったことに思いを致す方が面白いですから」と付け加えた。
 
コンサートの曲目はへ短調D625505)。1818年作曲のD625は第1楽章が未完成で、へ短調、ホ長調、ヘ短調という3楽章構成のソナタとされてきたが、最近の研究でアダージョ変ニ長調D505がD625の第3楽章だったという見方が有力になっているという。「ヘ短調はほの暗い雰囲気でベートーヴェンの『熱情』を想起させ、ショパンの変ロ短調の第4楽章のようにも聞こえる」と解説する一方で、第1楽章に展開部はあるが、再現部がないのは、時間がなかったからとか、食事に行きたかったのだろうかといったように、何故かを考えることが重要」などとジョークも飛び出す。完結しない作品が多く残り、謎めいている半面、時代を先取りする実験、挑戦を続けたシューベルトの人間像を深く探求する先生の全曲演奏を目をつぶって聴いた。学ぶべきは、演奏家が楽曲の本質をつかむには作曲者の内面に迫るアプローチが欠かせない、ということなのだろう。筆者にはたいへん難しいレクチャーだったが、大いに勉強になったような気がしている。 (走尾 正敬)
 
 

「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64」

レクチャー&コンサート
2018年7月21日(土)15時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

 
講師:星野宏美(音楽学)
演奏:長尾春花(ヴァイオリン独奏)
  :加藤洋之(ピアノ伴奏)
 
 室内楽中心のTAMAフォーラムの初めての協奏曲の登場である。あいさつに立った岡山芳子・TAMAフォーラム副理事長は、岡山潔理事長ともども、わたしたちのたっての願いで実現した企画であり、国際的評価の高いメンデルスゾーン研究家の星野さんにレクチャーをお願いした。そして期待される若手ヴァイオリニストの長尾さんと国際的に活躍中のピアニストの加藤さんで全曲を演奏していただくと語ってユニークなレクチャーコンサートが始まった。
 星野宏美講師は、この完璧な美しさを備えた奇跡的な傑作についてはいかなる言葉もむなしい。しかし与えられた時間の中で、できるだけ簡潔に語りたいとしながら、曲の成立について、綿密な考察を展開した。その一端をここに記録する。
*ホ短調のヴァイオリン協奏曲は珍しい。独奏の開始の新鮮さとその躍動感から全曲を一気に聞かせる名品である。
*第2次大戦後のメンデルスゾーン研究は客観的実証を大切にし、自筆草稿、38年の生涯に書かれた書簡などの研究が進んだ。2017年に新全集が出て、いくつかの新しい成果を生み出している。
*彼はこの曲のスケッチを7つ残している。新全集ではスケッチの書かれた時期が不明であることが分かったとされているが、今日はわたしなりの仮説を出したい。
*この曲の着想は、1838年7月の手紙に見える。時に29歳。1835年にライプチヒ・ゲヴァントハウスの指揮者となり、翌年、優れたヴァイオリニスト、フェルディナント・ダヴィッドを首席奏者に迎える。ここから美しい室内楽、弦楽四重奏曲作品44の3曲、ヴァイオリンソナタヘ長調、チェロソナタ変ロ長調を完成、1839年にはピアノ3重奏曲ニ短調作品49が生み出された。
*1838年のダヴィドへの手紙で、君のためにヴァイオリン協奏曲を作曲したい。冒頭をどうするか考えあぐねていると伝えている。弦楽四重奏曲作品44-2と同じく、最初からホ短調で構想されている。協奏曲は第1楽章がホ短調からホ長調へ、フィナーレはホ長調とロ長調と華やかな効果を追求している。
*私はスケッチ①が7つのうちの最初のもので、1838年にできたと考えている。ホ短調四重奏曲とこのスケッチが似ているからである。ここで長尾さんがスケッチ①の冒頭8小節を弾く。そして、ヘ長調ヴァイオリンソナタの冒頭を長尾さんと加藤さんが弾く。ヘ長調ながらこの冒頭とスケッチ①はよく似ている。ホ短調四重奏曲の第1ヴァイオリン主題もシンコペーションも似ている。
*ヴァイオリン協奏曲第1楽章のアレグロ・モルト・アパッショナータという発想は、四重奏曲作品44-1と44-2の中間に位置する躍動の表現と見ることができる。
*ダヴィッドはヴァイオリン協奏曲を歓迎する返事を出したもののなかなか完成しない。催促すると、メンデルスゾーンは書きたいのはやまやまだが、冒頭などがうまくいかないと返事する。1839年にはまだ彼は曲を書いていないというのが私の仮説だ。
*ここでスケッチ①とスケッチ②のはじめ21小節を長尾さんが弾き比べる。スケッチ②のほうが協奏曲の完成版に近いがスケッチ①も②に生かされている。スケッチ①はシの音が押しつけがましいが、スケッチ②でメンデルスゾーンは音楽を語り始めたようだ。
*スケッチ②を書いたのは1840年7月だと考える。この時彼はヴァイオリン協奏曲が完成と書いている。しかし実際には、ダヴィッドの催促にもかかわらず、1844年9月にやっと完成した。
*第1楽章の冒頭部分は前半の歌と後半の語りかけからなっている。付点楽譜から自由になったが、語りかけのところの付点表現は残された。
*この協奏曲の特徴の一つは、同音反復にある。例えば第1楽章の第2主題の管楽器のメロディがそうだし、第2楽章の中間部、第3楽章への移行部でも同音反復してから主部に入り、後半にも同音反復が出現する。
*ニ長調四重奏曲作品44-1の躍動感が協奏曲の第3楽章の旋律に生かされている。ブリリアントという点でこの2曲は共通している。
*ヴァイオリン協奏曲が完成した1844年に35歳のメンデルスゾーンは何をしていたか。フランクフルト郊外の保養地バート・ゾーデンに2か月逗留していた。鉱泉が19か所あり、彼もこの炭酸水を飲んだようだ。この地にはワグナーもチャイコフスキーも滞在した。
*彼は1835年にセシルに出会い、37年に結婚、新婚旅行中に弦楽四重奏曲を書き始め、38年に長男カールが生まれ、ヴァイオリン協奏曲を着想した。それが案外手間取り6年かかったわけである。1842年、13歳のヨアヒムがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をメンデルスゾーンの指揮で復活演奏し、それに刺激されてメンデルスゾーンが完成を急いだとも考えられる。
*メンデルスゾーンはフランクフルトからゾーデンへ蒸気機関車と馬車を乗り継いでいった。彼はベルリンやポツダムへ行ったり来たりの忙しい生活をしていたが、これも蒸気機関車があったからこそである。
*絵が得意だった彼は1844年9月にゾーデンでの休暇の様子を素描している。中央に家族のだんらん、下にフランクフルトの町、蒸気機関車などが描かれている。彼は本当に家庭を大切にした人だった。
*1845年3月、ヴァイオリン協奏曲はライプチヒでダヴィッドにより初演されたが、メンデルスゾーンの姿はなかった。彼はフランクフルトの家族のもとにいた。出来れば指揮よりも作曲に専念したいとの思いが強まっていた。
*彼は1847年に38歳で逝去した。このみずみずしい感性と躍動感に満ちたヴァイオリン協奏曲は彼の最後の管弦楽作品となった。病弱だった妻のセシルもこの5年後に亡くなった。
 
 以上で星野宏美講師のレクチャーは終わり、休憩後、この3楽章からなるヴァイオリン協奏曲全曲が長尾春花さんのヴァイオリン独奏と加藤洋之さんのピアノで演奏された。その演奏は見事というほかはないもので、この曲の優美さ、情熱、抒情をあますところなく描き出した。オーケストラ伴奏部は、加藤さんのピアノの素晴らしいサポートにより曲の構造をかえって明晰にしたと思えた。(記録:西谷晋)
 
 
 

シューベルトとシューマン超越の煌めき 

レクチャー&コンサート
2018年10月20日(土)15時~スタジオ・コンチェルティーノ

 
講師山本美樹子(ヴァイオリン)
共演:小坂圭太(ピアノ)荒井結(チェロ)
 
 
この日は初期ロマン派音楽をテーマにして、ヴァイオリニストの講師、山本美樹子さんが登場した。これに先立ち、岡山芳子TAMA音楽フォーラム副理事長(現理事長)から岡山潔理事長が3年にわたる闘病のあと、去る10月1日に逝去したとの報告があり、今日の講師、山本さんは岡山潔理事長の教え子であると紹介された。
レクチャーコンサートは前半がシューベルトの3曲、小協奏曲ニ長調D345、「華麗なるロンド」ロ短調D895、ピアノ三重奏曲「ノットゥルノ」変ホ長調D897。休憩をはさんで後半はシューマンの幻想小曲集イ短調作品88とヴァイオリン・ソナタ第3番イ短調WoO2の2曲がそれぞれ、山本さんの解説の後演奏された。
山本さんは東京芸大・同大学院博士課程修了。現在、演奏活動の傍ら東京芸大大学院とお茶の水女子大で講師を務めている。ピアノの小坂さんは東京芸大・同大学院修了。現在、お茶の水女子大の准教授。チェロの荒井さんアメリカ留学後にドイツ国立ハンブルグ音楽大学に留学。現在は帰国してソロと室内楽中心に活躍中。
山本さんのレクチャーは、年表付きの3ページにわたる説明文と2ページ12の譜例をもとにした詳細かつ熱意に満ちた内容だったが、ここでは残念ながら、ごく一部しか紹介できない。以下は解説の一端である。
音楽演奏家にとっても、ここにいる皆さんにとっても、近代への扉を開いたシューベルト、シューマンの作品は宝探しのようなものだと思われる。シューベルト(1797~1828)というとまず歌曲が頭に浮かぶが、彼の作品はあらゆるジャンルにおよび、その多彩さには驚くべきものがある。シューベルトの時代は市民階級が社会の中心になりつつあり、家庭内での演奏がさかんになっていた。
彼の若い時は、モーツァルトに惹かれていた。それはたとえば1816年6月の日記にもよくあらわれている。そして、その後、1820年あたりから、よりよい世界への憧れや幻想、現生からの超越への希求、つまり個人的で内面的なロマン主義的思想に転回してゆく。これは、それまで対極にあったベートーヴェンへの接近でもあった。
これから演奏する1816年の小協奏曲と、晩年1826年の「華麗なるロンド」、1827年の「ノットゥルノ」にこのようなシューベルトの変化と成熟ぶりがよくあらわれている。
一方のシューマン(1810~1856)はライプチヒ大学に入った1828年にシューベルトに触発された連弾曲「8つのポロネーズ」をつくるなどの作曲活動を始めたが、激動
の時代の中で、社会情勢に敏感な面もあった。幻想小曲集は4つの小品からなり、並列的であるとともに、曲同士の連携と対比があり、それがロマン的フモール、高い次元の超脱性をもたらしている。
最後のシューマンのヴァイオリン・ソナタ第3番イ短調は、山本さんが国立音楽大学の藤本一子名誉教授の指導によりその作品論で博士号を取得したこともあり、説明に一段と熱がこもった。
この曲はヨアヒムの演奏に刺激されたシューマンが友人ブラームスとA.ディートリッヒの3人で共作した「FAEソナタ」に基づいている。FAEとは、ヨアヒムの座右の銘「Frei Aber Einsam=自由にしかし孤独に」の頭文字である。シューマンはこのソナタの第2楽章と第4楽章を担当したが、この初演直後の3日間で第1楽章と第4楽章を書き足して、ヴァイオリンソナタ第3番に仕上げた。第1楽章はゆっくりとした序奏から生き生きとした主部に入るソナタ形式。断片的で並列的な動機の貼り合わせによる多層な時間軸を創出している。第2楽章は間奏曲で、FAE音型の主題を提示し、対位法的に動く。第3楽章はスケルツオ、小ロンド形式により、焦燥感と幸福な幻想が対比される。第4楽章フィナーレは、FAE主題をいきいきと展開しながら、すべての楽章の動機が現れ、コーダでは真に幻想的かつ協奏的な二重奏を展開する。ここではすべてを超越したまばゆい音楽世界が現出する・・・・と言外にいまは亡き師、岡山潔への想いを語っていた。(記録:西谷晋)
 
 

ベートーヴェン ピアノ・ソナタの研究 

 レクチャー&コンサート
2018年1117日(土)15時 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 
講 師  野平 一郎(ピアノ)
 
 第92TAMA音楽フォーラム室内楽セミナーは故・岡山潔理事長の跡を継いだ岡山(服部)芳子・新理事長の司会で始まった。今回の講師はおなじみの野平一郎・東京藝術大学作曲科教授。これまではフランス音楽を多く採り上げてきたが、昨年7月に上梓した『ベートーヴェン ピアノ・ソナタの探究』(春秋社)を岡山潔理事長(当時)が読んで、野平先生の来年の室内楽セミナーのテーマはこれ、と決めていたのだという。
 
 ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 17701827年)が生涯をかけて取り組んだピアノ・ソナタは彼の交響曲や弦楽四重奏曲とともに音楽史上にそびえる高い峰のひとつ。本書はピアノ・ソナタ全32曲のうち主要な12曲を採り上げ、楽章ごとに検討を加えた専門書で、何世紀にも及ぶ音楽史を踏まえた現代の作曲家でありピアニストでもある野平先生は、年齢とともに進化するベートーヴェンの作曲技法を解き明かしつつ、本人の意図や演奏効果、それらの背景にある時代の変化などを広く深く分析、考察している。
 
レクチャーではまず、ベートーヴェンの作品群におけるピアノ・ソナタの位置づけについて「ベートーヴェン自身はピアニストであり、作曲家として創作を始めたころからピアノ・ソナタは大切なジャンルでした。第1番の作曲は1795年、25歳くらいの時ですが、非常に有名な第23番「熱情」は18045年の作曲で、10年と経たないうちにこれほど多くを書いてしまった。これに対して、交響曲は生涯で9曲しか書かなかった。モーツァルトは40曲以上、エステルハージ家につとめていたハイドンは義務があったから100曲ほども書いています。ピアノ・ソナタでも、1805年以降のベートーヴェンの1曲1曲の比重は交響曲と同じように以前と比べものにならないくらい重い」と指摘、「彼はハイドンやモーツァルトよりもピアノ・ソナタを重く見ていた。彼ら2人にとっては第1楽章を書くことが重要な枠組みで、語弊があるかもしれないが、第2、第3楽章は少し軽い。これに対してベートーヴェンは史上初めて4楽章のピアノ・ソナタを書いた。第1楽章はもちろん重要ですが、フィナーレの比重もそれと同等と考えていた」「第1楽章はソナタ形式、第2楽章は緩徐楽章、第3楽章はダンスの楽章でスケルツォ(モーツァルトまではメヌエットと決まっていたが、ベートーヴェンは典雅なものとは違う、もう少し活発なものを好んだ)、第4楽章はロンドといったように、4つの楽章に別々の形式を与えていた」などと解説した。
 
 野平先生がレクチャーのあとで演奏したのは後期の第31番と2楽章だけの第32番の、ともに1822年の出版で高い精神性を備えた2曲。「初期、中期、後期と分ける(後世の)説明はベートーヴェンから始まったようで、1815年くらいからが晩年になる。1770年生まれなので45歳。今では晩年とは言えないが、創作面ではそう言え、音楽にストーリー性が出てくる。第31番は主要(第1)楽章、第2楽章がダンス、最後の第3楽章はレシタティーヴォが来て『嘆きの歌』とあり、純粋な器楽曲ではなくなってきている。そしてフーガがやって来る。『嘆きの歌』が嘆き度を高めて戻って来て、これが終わると鐘が鳴る。おそらく復活祭の鐘だろうと言ったのは園田高広(故人)です。そのあと、音楽が次第に明るくなって救いがある。第九交響曲やミサソレムニスと並行して作曲を進めていた時代なので、ピアノ・ソナタにも宗教的なものを混ぜたのか」
 
 先生は続けて「ベートーヴェンは展開がなければ意味がないと考えていました。これがピアノ・ソナタを肥大化させていく原因になった。彼の音楽はとてもドラマティックで、切った張ったが支配しているが、オペラ作曲家ではなかった。モーツァルトは再現部でもとに戻り、激しい場面があったことを感じさせない。ベートーヴェンは時間が絶対にもとに戻らない(つまり音楽の時間は不可逆である)ことを証明した作曲家で、再現部はもとに戻さず、同じようでいて少し違う。そして、第3番から反復記号をやめてしまった。さらに、彼ほど調性に敏感な作曲家はいなかった。色彩感覚を持ち合わせていた・・・」などと付け加えた。ベートーヴェンの楽想、表現意欲の高まりが従来の形式に収まらず次々と革新を生み出したうえ、時代を刻印しながら現代にも通じる先見性を備えていたわけで、先生は著書のなかで、長大な第29番「ハンマークラヴィーア」について「もはやその後の何人も凌駕できない『大宇宙』が作り出された。オーケストラも合唱もないピアノという1つの進展途上にある楽器だけで作り上げられた『世界』であり『宇宙』である」(254ページ)と評している。
 
 名人級のピアニストだったベートーヴェンはピアノ製作の技術革新とともに歩み、進化を遂げたとも言える。初期の段階ではウィーン派のピアノ、ワルター(5オクターヴ)などを使い、次にパリのエラール(5オクターヴ半)で第21番「ワルトシュタイン」や第23番「熱情」を作曲、その後、ウィーンのシュトライヒャー(6オクターヴ)で第26番「告別」やピアノ協奏曲第5番「皇帝」などを生み出した。第29番「ハンマークラヴィーア」を作曲中の1818年春にロンドンのブロードウッド社から、大きな音とより低い音が出せる6オクターヴのピアノを贈られ、少なくとも第4楽章はこれを使って作曲したと言われている(後続のピアノ・ソナタでもブロードウッドを使ったようだ)。
 
この出来事から今年でちょうど200年。現存する最古のピアノメーカーとされるブロードウッド社はこれを記念して様々な催しを企画、ホームページに「最も非凡な贈り物(A most remarkable gift)」という短いコラムを載せている。それによると、創業者ジョン・ブロードウッドの三男トーマスが1817年の夏にウィーンのベートーヴェンのもとを訪ねて、難聴が悪化している作曲家が再三、地元のメーカーに、もっと大きな音が出るものを供給出来ないか求めていることを知り、自社のピアノを提供することを決意したのだという。余談だが、ベートーヴェンに贈られたブロードウッドは、ピアノの魔術師と称されたリストの手を経て、1873年からブダペストのハンガリー国立博物館が所蔵している。
 
 スタジオ・コンチェルティーノのピアノはドイツ・ハンブルク製のスタインウェイ。当然のことながら、ベートーヴェンの時代のものよりも格段に優れているので、野平先生の演奏は作曲者自身の脳裏に響いた音よりもずっと洗練されているのでは、などと思いながら第31番、第32番に耳を傾けた。2曲を弾き終えた先生は「アンコールを弾くべきかどうか迷っているのですが、深遠なものでお帰り頂くのは何なので、もう少し前の時代のメヌエットで」と言いながらスタインウェイに向かった。これもまたベートーヴェンらしい健康な響きがスタジオ・コンチェルティーノに広がった。(走尾 正敬)
 
 

「午後のバロック~クリスマス特集~」

レクチャー&コンサート
2018年12月9日(土)15時~18時スタジオ・コンチェルティーノ

 
講師 小林道夫(チェンバロ)
共演 服部芳子(ヴァイオリン)
 
 今年最後のTAMA音楽フォーラムはクリスマス特集、つまりノエルということで小林道夫先生においでいただきました。ここにチェンバロが入るのは初めてのことで、どんな響きがするのか楽しみです――岡山芳子理事長がこうあいさつし、さらに「プログラム後半で、服部芳子とかいうヴァイオリニストも共演します」と付け加えて会場の笑いを誘い、和やかにフォーラムは始まった。
 鍵盤楽器の大家、小林先生はまず若いころから世話になっている島口さんの作ったフレンチモデルのチェンバロを紹介した。このフレンチモデルは低音がよく響き、高音は甘い音という特徴がある。上段と下段の音色が違い、もう一つの弦があって、一緒に弾くとより繊細に響く。つまり、天上の高い宮殿などで弾くにふさわしい楽器であると語りながら、曲の解説に入った。
 J.S.バッハのチェンバロ曲はクラヴィア練習曲集、6つのパルティ―タなどに加え、イタリア協奏曲ヘ長調BWV971がある。これを2弾鍵盤でやるのだが、ピアノとフォルテの細かい指定はあるものの、それ以外の指定がないので、いろいろ考えて演奏する必要がある。こう説明した後、アレグロ、アンダンテ、プレストの全曲を演奏した。このあと「聞く方にはここはとても響きのいい空間だが、私はちょっと困る。皆さんと近すぎるので」と笑わせた。
 次の曲はやはりバッハのパストレルラ ヘ長調BWV590からアルマンドとアリアの2楽章。これはオルガン曲であり、弾いたこともあるが、きょうは故岡山潔さんからクリスマスにふさわしい曲と前からいわれていたので、これをチェンバロでと言いつつ、二つの楽章を演奏した。そして、550曲もあるスカルラッティのソナタは同じ調性の曲がペアになっている場合が多いが、この日は同じハ長調の二つのソナタ(K.513K.159)、遅い曲と速い曲という対照的な組み合わせで弾いた。
 つぎはルイ・クロード・ダカンの文字通りのクリスマス=ノエル。彼はフランスの神童で6歳の時ルイ14世の前でオルガンを演奏した。今日は12あるノエルの第10番を弾くが、これは本来3段鍵盤の曲だといいながら演奏した。
 さてここで、ヴァイオリンの服部芳子が登場し、J.C.モンドンヴィルのヴァイオリン・ソナタ第6番イ長調を演奏した。小林先生は、この作曲家は18世紀中葉にパリで活躍したヴァイオリニストで作曲家だが、いまはあまり演奏されないと解説し、3楽章全曲を演奏し、バロックの雰囲気が会場にみなぎった。
 休憩の後、まずヘンデルのヴァイオリン・ソナタ ニ長調Op1 Nr.13。有名な曲であるからか説明はなく、全4楽章を服部・小林の二人は会場の静まり返るなか、繊細で典雅、心をこめて演奏した。
 つづいて、J.S.バッハのフランス組曲第5番ト長調BWV816。申し上げるひつようはないが、フランス組曲もイギリス組曲もバッハと関係がないし、どちらもフランス的だといえる。フランス組曲は当時とても流行ったので写本が多い。昨年、ヘンレ版を入手し、まだなれないが、といいつつ、全8曲を見事に演奏した。
 これでプログラムは終わったが、会場の熱い雰囲気の中、小林先生は、C.H.ライネッケの「クリスマスのソナチネ」を「これを聞いてバッハの大きなオラトリオを聞いた気になってくださるとうれしい」と言いつつ演奏した。さらに、再び服部芳子が登場し、バッハのヴァイオリン・ソナタ第1番の第3楽章アンダンテ、そして、やはりバッハの「G線上のアリア」が演奏されて、この豊かなクリスマスとバロックが結びついたコンサートは終了した。それは「ここでチェンバロを響かせたい」という故岡山潔理事長の念願通りの午後のひとときでもあった。(記録:西谷晋)
 

R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ

公開レッスン&コンサート
講師:堀米ゆず子(ヴァイオリン)
2019年1月19日(土)15時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 2019年のTAMA音楽フォーラムは堀米ゆず子さんによるレッスン・コンサートで幕を開けた。まず岡山芳子理事長が新年のあいさつをした後、堀米さんは1年前のフランクのヴァイオリン・ソナタの素晴らしい講座につづくもので、今日は3組の受講グループ6人に来ていただいた、と語った。レッスン曲は近年とみに評価の高まるR.シュトラウスのピアノとヴァイオリンのためのソナタ変ホ長調作品18。
堀米さんは1980年、ベルギーのエリザベート王妃国際音楽コンクールで日本人初の優勝を飾り一躍名を上げた世界的名ヴァイオリニスト。現在、欧米と日本で演奏活動する傍ら、イギリス、ベルギーで教鞭をとっている。
この日のレッスンは、受講aグループの城戸かれんさん(V=東京藝大大学院修士課程2年)と横山瑠佳さん(P=東京藝大大学院修士1年)が第1楽章を、bグループの糸原彩香さん(V=愛知県立芸大卒)と佐伯麻友さん(P=桐朋学園大研究科修了)が第2楽章を、cグループの斎藤碧さん(V=東京藝大3年)と尾城杏奈さん(P=東京藝大3年)が第3楽章を演奏し、それぞれ指導を受けた。堀米さんは自分のヴァイオリンを手にとりながら、実に綿密かつ懇切な指導ぶりで、その全容はとてもここに再現出来ず、わずかに気が付いた点だけを摘記する。
 
(第1楽章)
*演奏後、ヴァイオリンの城戸さんに「何が難しかったですか」と問いかけ、前へ前へと音色の変化豊かに進むところという話となり、堀米さんはベートーヴェンとの違いを例えに出した。師の江藤俊哉先生はベートーヴェンの密度はとても高いが、シュトラウスの場合はベートーヴェンに比べて空気が大切なので、音楽に空気を入れたほうがいいと言われていた。冒頭は手さぐりするように入っていくこと、アクセントなどの指示がやたらと出てくるので、アクセントをつけ過ぎないこと.指示に従いすぎるとテンポが遅くなる。
*情熱を籠めたいときは、体を右や左に動かすなど試みて強く弾く。
*この楽章にはシュトラウスならではの、曲をとんでもないところに連れて行く転調の妙がある。「エレクトラ」「バラの騎士」など彼のオペラはきれいなハーモニーに満ちている。そのような表現がほしい。
*曲想のまだ途上にあるフォルテを強く弾きすぎると後が続かない。
*コーダでは(シュトラウス的に)いやらしくならないで格好よく弾きたい。
 
(第2楽章)
*この楽章の演奏は大変、とても難しい。冒頭のヴァイオリンはダウンでなくアップボウで弾くといい。いろいろ試すのは大切だ。
*たとえばアルゲリッチのピアノ演奏は、シューマンのソナタなど聞いても非常に力強い。しかしそれだけではない。押すだけでなく引くことをわたしは彼女から学んだ。
*スラーの表記にはできる限り従った方がいい。しかし変えたいときはなるべくさりげなく自然に。
*一つのエピソードが終わり、次へ移るとき、変化をつけたい。動きを見せてほしい。もっと空気の入ったふくらみを・・・。
*音楽は会話なのだ。フレーズ全部にスラーがかかっているときは、どこで切るかを決めたい。会話だから役割を分担したい。
*いろいろの曲折のあとのへ短調なのだから、そこはしっかりと表現したい。
*終わりのところは高く飛翔するように(と堀米さんはジェスチャーで示した)。
 
(第3楽章)
*とてもよく弾けた、と語りつついくつかの注意があった。リズムをよく考えたい。もっとコントラストがほしいところ、メリハリをつけたいところがある。
*出だしのピアノは音のぶつかり合いをもっと出していい。葬送行進曲的な雰囲気だから、音のメリハリでそれがわかるように弾きたい。
*その後のト長調のメロディー、そこは解放された感じで、なめらかに、しゃくり上げないで。
*(終結部で)フォルテを強くしすぎないで。4つのテーマが全部聞こえるように演奏したい。似たフレーズの繰り返しでは単調にならず、変化をつけて。このあたり堀米さんは手拍子でリズムを取りながらの指導となった。
 
 15分の休憩後、コンサートに移り、ピアニストの津田裕也さん(東京藝大卒業後、ベルリン芸大で研鑽を積み、いま国際的評価を高めている)が堀米さんと共演して、先ほどのR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏した。そこには、まだ20代前半の若きR.シュトラウスの情熱(第1楽章)、綿々たる抒情(第2楽章)、「ドン・ファン」や「バラの騎士」を思わせる起伏にとんだ表情(第3楽章)が見事に再現された。
 満席の聴衆の長く鳴りやまない拍手にこたえて、マリア・テレジア・フォン・パラディスの「シシリエンヌ」が初春の夕べを静かに彩った。(記録:西谷晋)
 

「新進演奏家シリーズ〜クァルテット ベルリン-トウキョウ」

コンサート
演奏: クァルテット ベルリン-トウキョウ
2019年2月18日(月)17時開演 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 TAMA音楽フォーラムとしては異例の月曜日午後5時からの演奏会となった。冒頭、岡山芳子理事長は、もともと、この演奏会は2月9日午後3時からの予定だったが、その日は大雪が予想されたため、急遽中止となり、4人のメンバーは多忙な日程の中、この日だけ開いているとのことで、実現した、聴衆の皆様にもご迷惑をかけた­­―-とあいさつした。クァルッテット ベルリン‐トウキョウの来演はこの日が2回目で、2016年1月30日のニューイヤーコンサート以来となる。当時お元気だった岡山潔前理事長が「いま最も期待している四重奏団」と紹介し、コンサートの後、演奏を絶賛しつつ、またぜひ来てもらいたいと語っていた。それがこの日実現したわけである。
 演奏前に第1ヴァイオリンの守屋剛志さんが、「プログラムにはありませんが」と断りながら、J.S.バッハの「マタイ受難曲」からのコラール「いつの日か私が去り逝かねばならぬとき」を弦楽四重奏で演奏した。言葉にはしなかったが、それは、芸大学生時代から薫陶を受けた師、昨年10月1日に他界した岡山潔へのオマージュであり追悼でもあった。
 これに続いてコンサートは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番変ホ長調作品74「ハープ」と、休憩をはさんでシューベルトの弦楽四重奏曲第15番ト長調D887の2曲が演奏された。いずれも若々しい情熱と、緩徐楽章の心を込めた深い抒情など、曲想を見事に表現し、聴衆から強い称賛の拍手を浴びた。その演奏には団員4人の敬愛する岡山潔前理事長への想いがこもっていた。長い拍手にこたえて、アンコールとして、前回の来演でも取り上げたハンガリーの長老作曲家、ジョルジュ・クルタークの「弦楽四重奏のための12のミクロリュード」から第1曲と第5曲を演奏した。バッハを敬愛するクルタークの悲しみと安らぎが交差するこのアンコールにさらに大きな拍手が送られた。
 最後に岡山芳子理事長が演奏をたたえつつ、「岡山潔が10年前にウィーン音楽・芸術大学の客員教授として、1年近く滞在した時、クルタークの音楽に接して感動し、ぜひ日本に呼びたいと言い続けていたのですが」と語った。
 現在のメンバーは守屋剛志(第1ヴァイオリン)、ディミトリ・パヴロフ(第2ヴァイオリン)、グレゴール・フラーバー(ヴィオラ)、松本瑠衣子(チェロ)の4人。岡山潔の強い推挽により札幌・六花亭ふきのとうホールのレジデンス・クァルテットに選ばれ、今年から契約はさらに3年延長された。この間、ヴィオラの交代はあったが、同四重奏団は国際的評価をさらに高めながら、世界第一級の弦楽四重奏団への道を着実に歩んでいるといえよう。
(記録:西谷晋)
 

「モーツァルト ピアノ協奏曲(弦楽四重奏版)の魅力を探る」~室内楽的視点からピアノ四重奏曲と比較して~

レクチャー&コンサート
講 師  伊藤 恵(ピアノ)
共 演  戸原 直、高橋 奈緒(ヴァイオリン)
     樹神 有紀(ヴィオラ)
     佐古 健一(チェロ)
2019年3月17日(日)15時 スタジオ・コンチェルティーノ

 
 第96TAMA音楽フォーラム室内楽セミナーの講師を務めたのはピアニストの伊藤恵・東京藝術大学教授。桐朋学園大学特任教授も兼ねている。岡山(服部)芳子・理事長がまず、ソロだけでなく室内楽や協奏曲でも活躍している伊藤先生を紹介、次いで共演の4人の方々は日ごろグループで活動しているのではなく、今日のコンサートのために集まったなどと説明した。
 
伊藤先生は「今日はサクラの花がもうすぐ開花する日曜日です。スマホに替えて二か月、それまではガラケーで・・・」などと近況を交えて挨拶。「このセミナーには仰々しいタイトルがついていますが、以前に(モーツァルトの生まれ故郷)ザルツブルクのモーツァルテウムで勉強したので、その経験からお話します。高卒(桐朋学園高校)でザルツブルクへ行き、1年くらいで慣れて。学生券はとても安く、貴重な演奏会を聴く機会に恵まれました」と振り返った。
 
1954年のザルツブルク音楽祭で巨匠フルトヴェングラーが指揮したモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 175691年)のオペラ「ドン・ジョヴァンニ(正式には『罰せられた放蕩者またはドン・ジョヴァンニ』)K527」の伝説的な名演がカラー映画(現在はDVD)になって残っているが、1819歳当時の先生はこの映画にも触発されて、「(モーツァルトという)偉い人がつくった音楽だなぁ、ものすごく偉い人、神様だと思っていました」。このなかで歌われるイタリア語の美しいアリア、「赦せない」とか、純愛、裏切りなどの激烈な歌詞は日本語の語感とはずいぶん違うと思ったという(台本はロレンツォ・ダ・ポンテ)。今年にはいって金沢、東京、熊本で行われた日本語による「ドン・ジョヴァンニ」の公演に加わったチェロの佐古さんも「日本語のテクストなので語感としては(原曲本来のイタリア語とは)全然違って・・・」と自身の印象を語った。モーツアルトは台本の尖った言葉、美しくも切ない表現をそれらにふさわしい音楽につくり上げ、一見すると不道徳な喜劇だが、悲劇の要素も備わった複雑な曲に仕上げたわけだ(日本語で歌うと、どこか違和感があるのだろう)。
 
 先生は「モーツァルトは我々が想像もつかない洞察力を音楽で表してしまいます。14歳の時につくったオペラ『ポントの王ミトリダーテ』(K87)は美しいだけでなく、嘆き、苦しみ、深い悲しみが切々と迫ってくる。その天才性はあがめるしかない。モーツァルトの音楽の究極のジャンルはオペラであり、いろいろなキャラクターが出てきて激しくてドラマチック、美しい女声のアリアが出てきて聴いている我々自身が触発されてしまう」と続けた。
 
 この日のセミナー&コンサートで取り上げたピアノ四重奏曲第1K478は交響曲第25K183、同第40K550や弦楽五重奏曲第4K516と同じト短調。悲しみとか死を予感させる調性ともいわれる。先生が先に触れた「ドン・ジョヴァンニ」の序曲は、主人公に決闘で殺された騎士長が石像となって現れ、押し問答の末にジョヴァンニが地獄に落ちる第2幕後半、オペラのヤマ場の音楽で始まる。この部分は恨みや怒り、修羅場を表すニ短調で、これもピアノ四重奏曲ト短調の出だしも、ともに重厚で悲劇的な感じを与える。
 
 このト短調四重奏曲を楽譜として出版する際にモーツァルトは出版社側から、難しくて誰も弾けないと言われたという。とりわけ、そのころのチェロ奏者の力量は楽譜の水準に達していなかったのだとか。当時のウィーンでは楽譜をたくさん売るために、曲そのものをもっとやさしくしなければならなかったわけである。先生は「(難しい曲にした)モーツァルトにとって、地獄みたいなものの存在が大切だったのでは。天国的なもの、地獄的なものの共存が私たちの胸を打つのです」と付け加えた。
 
 一方のピアノ協奏曲第12番イ長調K414は予約演奏会のために作曲した第11番から13番の3曲のなかのひとつで、なぜモーツアルト自身がオーケストラ部分を弦楽四重奏に編曲したのか。その訳は小人数で弾けるから、ということらしい。ピアノ四重奏曲(ピアノにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各1)に対し、こちらは第2ヴァイオリンが付け加わるだけの編成なので、室内楽として演奏する機会がぐっと増える(たぶん楽譜も多く売れる?)。
 
 ピアノ協奏曲第12番の第1楽章は実に軽やか心地よく、第2楽章はピアノも四重奏ものびのびとうたうなど、いかにも明るいモーツアルトらしい。先生は「指揮者がいないのは、それはそれでよいのですね。室内楽のように自発的に弾く醍醐味があります。(予約演奏会では)モーツァルトはたぶん、(オーケストラの指揮とピアノを兼ねた)弾き振りぶりだったのでしょう」と、演奏家心理、本音に言及した。
 
今日のために組成されたとはとても思えないすばらしい演奏がスタジオ・コンチェルティーノに響きわたり、モーツァルトという作曲家の幅の広さと深み、オーケストラとはまた違う室内楽のよさを味わうことができた。
 
最後に岡山(服部)理事長が「生き生きとファンタジーが湧いてきて、どう言ったらいいのか、弾いている人と聴いている人の垣根がないと言うか、不思議な幸福感に包まれました」と締めくくった。(走尾 正敬)